安藤ハザマ様 事例

リニア中央新幹線 品川駅新設工事の現場と部材工場をつなぎ、ミリ単位まで確認できる高精度な遠隔臨場を実現

1.概要

JR品川駅と東海道新幹線の軌道の直下で進められている、リニア中央新幹線の始発駅 品川駅の新設工事。延長約900mとなるリニア中央新幹線品川駅の新設工事のうち安藤ハザマ様では、地下を掘削し、延長約400m×幅最大約60m×高さ最大約50mという巨大な函体を構築する工事を担当されています。地下を掘削するにあたり、周りの地盤に影響が出ないよう、最初に構築するのが地中連続壁です。地中連続壁を形成する鉄筋かごは、遠方にある工場で製造しており、この鉄筋かごの検査を効率よく行うために、RICOH Remote Fieldを活用されています。
鉄筋かごを製造している野田(千葉)の工場から品川の現場事務所へ、検査の映像をRICOH THETAとスマートグラスでリアルタイムに配信。鉄筋かご全体を俯瞰で見ることも、鉄筋1本の太さをミリ単位で確認することもできる、高精度な遠隔臨場を実現されています。往復約3時間、1年強で約300時間かかっていた品川・工場間の移動時間は大幅に削減され、工場に出向く職員数も従来の約半分に。建設業の2024年問題の解決や生産性向上に加え、全社的なDX推進につながる効果も期待されています。

2.課題と効果

【導入前の課題】

  • 現場・工場間の移動に往復約3時間かかる。
  • 限られた人材を有効活用したい。
  • 検査には、1ミリ単位で検査できる精度が必須。

【導入後の効果】

  • 往復約3時間/1年強で一人当たり約300時間という現場・工場間の移動時間を大幅に削減できる。
  • 検査と映像配信を一人で行えるため、従来の約半分の人数で検査を実施できる。
  • RICOH THETAによって360°の映像で検査の様子全体を俯瞰することも、スマートグラスによって高精細な映像で細部をミリ単位で確認することもできる。

3.選定のポイント

  • 360°の映像を配信できる。
  • 映像が鮮明でデータ配信の遅延も少ない。
  • 操作が簡単で様々な現場で活用しやすい。

4.導入の背景と効果

中央新幹線品川駅新設(非開削工区)現場の概要について教えて下さい。

株式会社安藤・間 中央新幹線品川駅新設(非開削工区)工事 東京支店 品川出張所 所長 山口 芳範 様
株式会社安藤・間 中央新幹線品川駅新設(非開削工区)工事 東京支店 品川出張所 所長 山口 芳範 様

リニア中央新幹線の始発駅となる品川駅の建設工事を行っています。現場は、JR品川駅と東海道新幹線の軌道の直下。その中でも当社が担当しているのは、非開削工区です。非開削工区では、地上構造物の安全性を確保した上で地下を掘削していくため、周りの地盤に影響が出ないように地中連続壁を構築し、既存の駅ビルと新幹線の線路を仮受けする工事を行った上で、延長約400m×幅最大約60m×高さ最大約50mという巨大な構造物を地下に建設していきます。
供用中の駅の地下、しかも1日約370本も新幹線が行き交う軌道の真下に、これほど大規模な函体を造る工事はほとんど例がないと思います。新幹線の運行に支障をきたさないよう、現場で様々な策を講じていくのはもちろんですが、現場外で製造している部材一つひとつについても精緻な検査が求められる工事となります。

安藤ハザマ様では、社内標準ツールとしてRICOH Remote Fieldを採用いただいています。採用した決め手を教えてください。

株式会社安藤・間 建設本部 建設監理部 システム運用監理グループ長 澤 正樹 様
株式会社安藤・間 建設本部 建設監理部 システム運用監理グループ長 澤 正樹 様

RICOH THETAによる 360°映像が配信できることと、スマートグラスで撮影した映像が非常に鮮明で1ミリ単位での確認が可能であること、そして何と言っても現場での使い勝手の良さが決め手になりました。過去に様々なツールを現場で検証したのですが、操作が複雑なものはどうしても浸透していきません。一方、RICOH Remote Fieldは、端末(RICOH THETA・スマートグラス)の電源を入れるだけですぐに配信が可能。RICOH THETAとスマートグラスはケーブルレスで、装着者が安全な作業と映像配信を行えるのも良かったところです。全国の現場へ順次展開を進めており、長期間にわたって本格的に活用した第一弾が、このリニアの現場となります。

リニア中央新幹線の品川駅新設工事において、RICOH Remote Fieldをどのように活用されていますか?

株式会社安藤・間 中央新幹線品川駅新設(非開削工区)工事 東京支店 品川出張所 工事課 赤松 隼輔 様
株式会社安藤・間 中央新幹線品川駅新設(非開削工区)工事 東京支店 品川出張所 工事課 赤松 隼輔 様

前述のとおり、リニアの新駅建設にあたっては、最初に地中連続壁を施工します。この地中連続壁を形成する鉄筋かごの検査に、RICOH Remote Fieldを活用しています。 鉄筋かごは野田(千葉)にある工場で製造しており、一度、設計通りに全て組み上げ、ミリ単位で検査を重ねた後、分割して品川の現場へ搬入します。万一にもサイズのずれ等が発生しないように分割・搬入の前に検査を重ねるのですが、品川・工場間の移動時間は往復約3時間。もっと効率よく検査を行うために、RICOH Remote Fieldを導入しました。
野田の工場から品川の現場事務所へ、検査の様子をRICOH THETAとスマートグラスでリアルタイムに配信。その映像を、発注者である東海旅客鉄道株式会社様(以下、JR東海様)とともに品川の現場事務所で確認し、遠隔で検査を行っています。

  • 工場:RICOH THETAを三脚で固定し、全体の様子を360°の映像で配信。
    工場:RICOH THETAを三脚で固定し、全体の様子を360°の映像で配信。
  • 工場:部材の細部を計測する手元を、スマートグラスで撮影。
    工場:部材の細部を計測する手元を、スマートグラスで撮影。

  • 事務所:工場から配信される映像を大画面で確認。発注者様とともに遠隔で検査を実施。
    事務所:工場から配信される映像を大画面で確認。発注者様とともに遠隔で検査を実施。
  • 事務所:高精細な映像で細部まではっきり確認できる。
    事務所:高精細な映像で細部まではっきり確認できる。

事務所:RICOH THETAの360°映像と、スマートグラスの詳細な映像を並べて表示。
事務所:RICOH THETAの360°映像と、スマートグラスの詳細な映像を並べて表示。

各地の建設現場で検査を遠隔で行う対応は近年始まったばかりで、少なくとも当社が担当しているリニア関連の工事では初です。リニアという前例の無い工事において、当社で前例のない遠隔臨場を実施する——。最初は試行錯誤するかもしれないけれど、前例がないからこそ面白い、取り組むなら一番に、という思いの方が強かったですね。何よりも、実現すれば作業負荷を大きく削減できるので、現場と建設監理部で連携し、高精度な遠隔臨場をスムーズに行える体制を整えていきました。

ミリ単位の検査も遠隔でスムーズに実現できていますか?

はい。RICOH Remote Fieldは映像が非常に鮮明で遅延も少ないので、鉄筋1本1本の太さをミリ単位で確認する細かな検査も、問題なく実施できています。
高精度な検査を安全に行うという点で、ハンズフリーで撮影できるメリットも大きいです。鉄筋かごは、高さ約1.2m・幅約2.0m・全長約48mあり、時にはかごの上やかごの内側に入って計測する場合もあります。高所や狭い場所で作業を行うにあたり、カメラを手で持つ必要がなく両手を使えるのは助かります。

導入効果を教えてください。

株式会社安藤・間 中央新幹線品川駅新設(非開削工区)工事 東京支店 品川出張所 工事課 宮武 泰弘 様
株式会社安藤・間 中央新幹線品川駅新設(非開削工区)工事 東京支店 品川出張所 工事課 宮武 泰弘 様

品川・工場間の往復で約3時間という移動時間を大幅に削減できました。検査の頻度は1週間に1~2回程度。これまでの1年強で約100回行っていましたから、これらを遠隔臨場に切り替えると単純計算で約300時間削減できることになります。
ハンズフリーで撮影でき、検査と映像配信を一人でも行えるようになった結果、検査のために工場へ行く人数も、従来の3~4名から1~2名に減らすことができました。
JR東海様からも、検査の精度を落とすことなく、効率的に検査が行えるようになったとのご感想をいただいています。

建設業の2024年問題の改善や、若手職員の育成への効果も期待されているそうですね。

建設業の2024年問題と言われる時間外労働時間の削減も含め、これからの建設業界ではDXツールの活用が必須です。建設業界の仕事の進め方、働き方もDXツールにより、より良い方向へ大きく変わっていくでしょう。 この現場では若手社員も多く働いています。彼らは、RICOH Remote FieldというDXツールによって移動時間が削減される効果を実感したり、一人で遠方の工場へ行き、リモートで先輩職員の指示を受けながら高度な検査を実施する、そんな経験をする機会もあると思います。この現場でDXツールの効果を体感した若手職員がそれぞれ巣立ち自分の現場を運営するときに、DXツールを柔軟に取り入れ、いっそう魅力的な業界へと導いてくれることを期待しています。

全社的なDX推進も含めて、今後の活用について教えてください。

株式会社安藤・間 建設本部 建設監理部 システム運用監理グループ 長谷川 貴広 様
株式会社安藤・間 建設本部 建設監理部 システム運用監理グループ 長谷川 貴広 様

これからの建設業にはDX推進が不可欠である一方、歴史が長い業界ゆえにどうしても慎重にならざるを得ない部分もあります。こうした中で今回、リニアという当社を代表する現場にRICOH Remote Fieldを投入し、高精度な検査を遠隔で実現できたことは、大きな価値があると思っています。
現在、RICOH Remote Fieldを活用しているのは、通信が良好な現場での遠隔臨場が主ですが、Wi-Fi™環境のトンネル現場、安全パトロール、現場見学会などの活用も検討中です。引き続き現場と建設監理部で連携し、RICOH Remote Fieldの活用はもちろん、全社の様々な面においてDXを実現していくこと目指しています。

集合写真
写真左から
リコー デジタルサービスBU デジタルサービス開発本部 日本極第二開発センター 第二業種DX室 開発推進グループ 齋藤 優輝
株式会社 安藤・間 中央新幹線品川駅新設(非開削工区)工事 東京支店 品川出張所 工事課 赤松 隼輔 様
株式会社 安藤・間 中央新幹線品川駅新設(非開削工区)工事 東京支店 品川出張所 所長 山口 芳範 様
株式会社 安藤・間 建設本部 建設監理部 システム運用監理グループ長 澤 正樹 様
株式会社 安藤・間 建設本部 建設監理部 システム運用監理グループ 長谷川 貴広 様
リコージャパン エンタープライズ事業本部 首都圏MA事業部 デジタルサービス第二営業部 MA3グループ 岡 芳行

5.お客様プロフィールと導入ソリューション

株式会社 安藤・間 様

https://www.ad-hzm.co.jp/

■会社所在地

東京都港区東新橋1-9-1


■事業内容

1.土木建築その他工事の調査、測量、企画、設計、施工、監理、技術指導の請負、受託およびコンサルティング業務
2.工事用品および機械器具の供給
3.不動産取引および不動産、有価証券の保有ならびに利用
4.土壌の調査・浄化工事の請負、廃棄物の収集、処理、処分等の事業およびこれらに関するコンサルティング業務
5.地域開発、都市開発および環境整備等に関する企画、設計ならびにコンサルティング業務
6.発電および電気、熱等エネルギーの供給事業およびこれらに関するコンサルティング業務
7.建築の請負を伴う不動産関連の特別目的会社への出資および出資持分の売買、ならびに信託受益権の保有および販売
8.コンピュータの利用に関するソフトウェア、工業所有権およびノウハウの取得、開発、実施許諾ならびに販売
9.建物の総合管理および警備業務
10.前各号に付帯する事業
11.前各号に関連する事業を他と共同経営しまたは他の事業に投資すること


■従業員数

3,375名(2024年4月1日現在)


■導入製品

RICOH Remote Field

■製品構成:

RICOH Remote Field
RICOH THETA
スマートグラス


本Webページ記載の会社名および製品名は、それぞれ各社の商号、商標または登録商標です。
Wi-Fi™は、Wi-Fi Allianceの商標です。
本ページに掲載されている情報は、2024年10月現在のものです。