公益財団法人 滋賀県建設技術センター様 事例

地方自治体や中小規模施工者が導入しやすい操作性・コスト感で、高精度な遠隔臨場を実現 国土交通省 インフラメンテナンス大賞 優秀賞を受賞

1.概要

滋賀県建設技術センター様は、県や市町等が手掛ける建設事業に対して、建設工事の積算や施工管理の受託、道路橋定期点検業務の一括発注、建設技術者を対象とした研修・講習の実施など、包括的な技術支援を行われています。幅広い事業の中でも、近年、特に注力されているのがインフラDXの普及です。建設事業の担い手不足は地方では特に深刻化しており、滋賀県建設技術センター様ではこうした状況を踏まえ、地域にとって最適なDXを検討。高精度な遠隔臨場を実現するため、RICOH Remote Fieldを導入されました。 市街地から離れた山間部、しかも急斜面のため立ち入りには危険を伴う斜面対策工事等における各種確認や検査を、遠隔で効率よく安全に行うためRICOH Remote Fieldを活用。RICOH THETA による360°映像と、ウェアラブルカメラによる作業員視線の4K映像を、RICOH Remote Fieldで配信し、滋賀県建設技術センターと発注者がそれぞれの事務所から、リアルタイムに確認できる体制を構築されています。高精度な遠隔臨場を、地方自治体や中小規模施工者も導入しやすい操作性・コスト感で実現したことや、360°カメラの活用事例集を作成したことが評価され、国土交通省 インフラメンテナンス大賞 優秀賞を受賞。地域全体のインフラDX推進に寄与されています。

2.課題と効果

【導入前の課題】
  • 従来の遠隔臨場では映像範囲が限られ、リアルの代替とするのは難しい。
  • DX推進にかけられる予算は限られている。
  • 地域全体にインフラDXを普及させたい。
【導入後の効果】
  • 画角を自由に動かせる360°映像と、作業員視線の4K映像により、リアルと同等の精度で遠隔臨場を実施できる。
  • 高精度な遠隔臨場を、地方自治体や中小規模施工者も導入しやすい操作性・コスト感で実現した。
  • 遠隔臨場のノウハウを公開。地域全体のインフラDX推進に寄与している。

3.選定のポイント

  • 360°映像をリアルタイムに配信できる。
  • 4K映像により、細部をミリ単位で確認できる。
  • Web会議と同じ感覚で手軽に操作できる。

4.導入の背景と効果

滋賀県建設技術センター様の事業概要を教えてください。

公益財団法人 滋賀県建設技術センター 技術課 主幹 白井 秀人 様
公益財団法人 滋賀県建設技術センター 技術課 主幹 白井 秀人 様
滋賀県建設技術センターは、県内唯一の公的な発注者支援機関として、県および県内19の市町等が行う建設事業に対して技術支援を行っています。工事の積算や設計管理、研修事業、橋梁点検事業、建設資材の品質試験など、調査・測量の段階から工事施工、メンテナンスまで包括的な支援を行っていますが、その中でも、近年、注力しているのがインフラDXの普及です。 建設事業の担い手不足は、地方では特に深刻化しており、生産性を向上させるDXが喫緊の課題となっています。また、2024年には国土交通省から「i-Construction 2.0」が発表され、DX推進の気運はますます高まっているのですが、県や市町それぞれがDX推進に取り組もうとすると、人的・費用的に相当な負担がかかってしまいます。そこで、当センターが地域の課題を踏まえた上で各種ツールや活用方法を検証し、そのノウハウを県や市町、民間事業者に普及・促進していくことを目指しています。

遠隔臨場を進化させるツールとして、RICOH Remote Fieldに興味を持たれたそうですね。詳しく教えてください。

発注者と施工者が現場へ何十回と赴いて行う立会検査は、人手・時間とも負荷がとても大きな工程です。この工程を遠隔臨場にシフトできれば、非常に効果が大きなDXと言えると思います。また、コロナの影響もあり、遠隔臨場自体は普及していると思います。ただ、固定カメラやスマートフォンなどを用いた遠隔臨場では、必ずしも閲覧者側が見たい場所を見られるわけではありません。そのため、従来の遠隔臨場をもって、リアルの代替とするのは難しい部分がありました。 リアルと同じように現場全体を見渡せるもの、ミリ単位まで詳細を確認できるもの、しかも、地方自治体や中小規模施工者が導入しやすい操作性、コスト感であること——。RICOH Remote Fieldはこれらの条件を備えており、このツールなら思い描いているような遠隔臨場を実現できるのではないかと思いました。

RICOH Remote Fieldを使ってどのように遠隔臨場を行っていますか?

公益財団法人 滋賀県建設技術センター 技術課 副主幹 竹内 信 様
公益財団法人 滋賀県建設技術センター 技術課 副主幹 竹内 信 様
県・市町と工事の受注者(民間の施工会社)で、斜面対策工事を中心に、RICOH Remote Fieldによる遠隔臨場を行っています。 崖崩れや地滑りを防ぐ斜面対策工事の現場は山間部であることが多く、移動だけで多大な時間を要することが珍しくありません。また、杭の長さや、薬剤を注入する穴の深さなど、工事完了後には確認できない不可視部が多くあるため、発注者立会のもとで行う確認や検査は何十回にも及びます。しかも、施工箇所が急斜面上にあり、専門の職人以外が近づけない現場では、発注者が高所の施工箇所を直接確認することはできません。こうした負担も制約も多い山間部での確認作業を、遠隔で効率的に行うためにRICOH Remote Fieldを活用しています。現場からRICOH THETAによる360°映像と、ウェアラブルカメラによる作業員視線の4K映像をRICOH Remote Fieldで配信。県・市町や当センターの職員がそれぞれの事務所からリアルな映像を確認できる仕組みを構築しました。
現場での映像配信の様子
RICOH Remote Fieldの画面イメージ
360°映像と作業員視線の映像

RICOH Remote Fieldの活用により、遠隔臨場はどのように進化しましたか?

従来の遠隔臨場と比べると、リアリティ、臨場感が違います。現場の何を映すのか撮影者にゆだねられてしまう従来の方法では、リアルの代替とするのは難しい部分がありましたが、RICOH Remote Fieldを活用することで現場での直接確認と同程度の情報を取得することが可能となりました。これにより、現場への移動時間を削減することができました。 例えば、琵琶湖周辺の斜面対策工事現場は、当センターから車で約2時間、県の土木事務所からも約45分離れています。現場にたどり着くには山道も越えていく必要があるため、現場への移動が大きな負担となっていましたが、RICOH Remote Fieldを活用することで、現地に行かなくても遠隔で詳細な検査や確認が可能に。立会検査1回あたり往復で90分以上要していた移動時間を削減できるようになりました。 現場に赴く現地立会から遠隔臨場に切り替える上で、閲覧する側が360°映像の画角を自由に変えることができ、見たい場所を見られることが有効だと思います。また、実際に現場に行っても見ることができなかった急斜面にある施工箇所の状況も、作業員が装着したウェアラブルカメラを介して、巻尺の目盛りや計測器の数値をミリ単位まで確認できるようになりました。

工事の受注者側にはどのようなメリットが生まれていますか?

受注者にとっても、RICOH Remote Fieldによるリアルな遠隔臨場を導入することで、立会者の到着待ちにともなう作業中断時間を削減できます。現場の多くの情報を確実に発注者に確認してもらうことも可能になり、受発注者間のコミュニケーションの円滑化にもつながると思います。 また、本社から現場を遠隔で支援したり、熟練技術者が複数の現場を遠隔で支援することも可能となり、品質確保や人材育成の面でもメリットがあるのではないかと考えています。 さらに、作業員も、ハンズフリーで撮影できるので、現場の安全性向上にもつながっていると思います。

遠隔臨場以外の活用も検討されているそうですね。

はい。例えば、災害時対応としての活用を検討しています。 緊急時に要確認箇所が多数発生した場合は、土木技術職ではない職員が現場確認に向かうこともあるのですが、現場の何を確認すれば良いのか、専門知識を有しない職員がその場で判断するのは困難です。その点、RICOH THETAとRICOH Remote Fieldがあれば、360°映像を現場から配信し、その映像をリアルタイムに県・市町の事務所から土木技術職員が確認し、的確な指示を迅速に出すことが可能になります。 それ以外にも様々な使い方について検証を重ねており、効果的な活用例を「360°カメラ事例集」としてまとめたり、当センター1階の「インフラDXブース」で紹介しています。
斜面災害現地調査でRICOH THETAを活用
360°カメラ事例集 (https://www.sct.or.jp/work/technic/360カメラ事例集)

国土交通省 インフラメンテナンス大賞 優秀賞について教えてください。

複雑で高価な方法ではなく、地方自治体や中小規模施工者も導入しやすい方法でリアルな遠隔臨場を実現したこと、また、そのノウハウを県内の関係者と共有し、県全体のDX推進に寄与したことを評価いただき、国土交通省 インフラメンテナンス大賞 優秀賞を受賞することができました。 県全体のDX推進は、当センターがまさに目指しているところです。「DX」というと、ハードルが高いととられやすいのですが、RICOH Remote Fieldのように、カメラや配信方法を少し変えるだけでも、作業効率や生産性を改善することができます。地域の皆様にRICOH Remote Fieldを通じて手軽にできるDXもあることを知っていただき、それぞれの事業でどんなDXができ得るのか、具体的な検討につながってくれたら嬉しいですね。RICOH Remote Fieldをきっかけに、様々な分野でDXが推進され、その効果が地域全体に広がっていくことを期待しています。
(写真右)公益財団法人 滋賀県建設技術センター 技術課 主幹 白井 秀人 様
(写真左)公益財団法人 滋賀県建設技術センター 技術課 副主幹 竹内 信 様

5.お客様プロフィールと導入ソリューション

公益財団法人 滋賀県建設技術センター 様

https://www.sct.or.jp/

■所在地

滋賀県草津市野路6丁目9番23号


職員数

32名(2025年4月現在)


■学校概要

滋賀県内唯一の公的な発注者支援機関として、県および市町等が行う建設事業について、幅広い技術支援を行う。
・インフラDXの普及
・積算等の技術支援・情報の共有化
・研修事業
・橋梁点検事業
・下水道排水設備工事責任技術者試験等
・建設資材の品質試験
など


■導入製品

RICOH Remote Field

■製品構成:

RICOH Remote Field
RICOH THETA
スマートグラス


本Webページ記載の企業名および製品名は、それぞれ各社の商号、商標または登録商標です。
本ページに掲載されている情報は、2025年2月現在のものです。